2009年10月07日

エゴン・シーレを知っていますか

6月以来、出張で久しぶりに訪れた富山。。
今から10年程前まで、定宿にしていたビジネスホテルの近くで、当時良く通っていた喫茶店に久しぶりに出かけてみる事にしました。

当時は出張の度によく利用していた喫茶店で、マスターとも顔なじみのお気に入りの喫茶店でしたが、富山での活動拠点を変えてからは、距離も離れてしまったため中々利用する機会も無くなってしまっていました。。

実は前回の6月の出張の際に、久しぶりにこの喫茶店を利用する機会があり、久しぶりに楽しみにして出かけたものの、その時はお店の電気が消えていて。。
『今日は定休日だったかな?』と店の入り口まで行ってみると、『店主がまた入院のため、しばらくお休みさせて頂きます』との張り紙がしてありました。。
『また』ってことは、マスターが体調でも壊して入退院を繰り返しているのかな?と推測されましたが。。

画材や梱包・ラッピング商材なども扱う大きい『文具ショップ』の一角の小さな区画に、テナントとして店を構えていた、

珈琲舎『エゴンシーレ』

20世紀初頭のオーストリアの画家『エゴン・シーレ』の名前を店名にした喫茶は、4人席のテーブルが3つ、カウンターに5人程座れる程度の小さな小さなお店でした。

『エゴン・シーレ』自画像 いつもモノトーンの服を着て、スリム(というよりはガリガリ)で、広いおでこに天然パーマのマスターは、隠者よりも一回り程年上でしたでしょうか。。。
いつも寡黙で余計なおしゃべりは一切しないマスターとは、時々言葉は交わすものの、その素性などは聞いた事もなく。。

でも、妄想好きの隠者の目に写るマスターは、見るからに画家でも目指していたかのようなスタイルで。。。
まさしく『エゴン・シーレ』の絵から飛び出したかのような風貌・スタイルが印象的でした。。
お店で使っていた珈琲カップには、『エゴン・シーレ』のクロッキーの自画像がプリントされていましたが、このプリントの顔を見た殆どのお客さんがマスターの顔がプリントされていると勘違いするほど、『エゴン・シーレ』の自画像の雰囲気にマスターはそっくりでした(笑)

『エゴン・シーレ』裸婦像 そして、一緒に働いていた奥様は。。
透き通るような真っ白な肌と、スリムで華奢なスタイルは、まるでバレリーナを思わせるスタイルで。。神秘的な印象が強烈に残っています。

店の所々には、全国から集めたマスカレード風の仮面やマスクなどが飾ってあって、もちろん『エゴン・シーレ』のクロッキーや水彩画も飾ってありました。

そして、その飾られていた1枚の『裸婦像』は、奥様がモデル??と思わせるような変な錯覚さえ覚えたのを思い出します。。
画家を目指していたマスターと、そのモデルを務めていた奥様。。。そんなカップルがいつしか結ばれた。。。なんて・・隠者の妄想は益々深まるばかりでした。。(汗)

たんに『エゴン・シーレ』のファンだからと言うだけでは説明がつかないような、そのスタイル・風貌・雰囲気、すべてが『エゴン・シーレ』の作品を感じさせるような、マスターと奥様なのでした。

そんな珈琲舎『エゴンシーレ』の売りは、
『ブラックカレー』という真っ黒なルーが特徴のカレー。
まるでイカスミを思わせるこのカレーは、かなり辛口の本格的な大人のカレーで、隠者も大好きでした♪

『ブラックカレー』関連記事
- 北陸カレー物語 エゴンシーレ
- カレー部★「エゴンシーレ」のブラックカレー
- 富山ランチ:エゴンシーレ
- ぼてやんでお腹満足!!@エゴンシーレ「ブラックカレー」

そして、もうひとつの売りが、毎日の『日替わりランチ』
カレーが売りの喫茶にもかかわらず、日替わりランチは純和風の自家製家庭料理が中心で(しかも、ありがちな「トンカツ」や「フライ」といったメニューではなく「サバみそ」や「肉じゃが」などといった、本当に素朴な家庭料理が中心でした)、ボリュームも満天で、お昼時にはいつもサラリーマンで賑わっていました

隠者もおなかが空いた時には、ここの日替わりランチで腹ごしらえをしていましたが、それでも『大盛りのご飯』は隠者には多すぎる量でして。。
いつも注文をする度に『ご飯少なくして』って頼むのですが、いつも決まって『大盛り』で出て来て、その度にもう一度『もっと減らして』と頼むのですが、『残してもいいから』って言われ、さらに『残すの嫌いだから』って、改めて減らしてもらうという、寡黙なマスターとのやり取りの繰り返し。。
毎回毎回同じ事繰り返しているんだから、いい加減に最初から減らして出してくれたら良いのにって、思う事もありましたが。。。でも、いつ行っても。何回行っても変わらず出されるこの大盛りの量は、このマスターの気持ちなのだろうなと、何だか妙に温かい気持ちにもなりました。。(もちろん、何回行っても無理矢理減らしてもらうのですが・笑)

『日替わりランチ』関連記事
- エゴン・シーレ(日替定食) - ぽか麻呂の独身貴族日記

富山 珈琲舎『エゴンシーレ』 ランチの忙しい時間帯が終わり一段落すると、マスターはカウンターで『鼻メガネ』『美術雑誌』を読み始めます。。。
その間も、殆ど客との会話は無しで、
時々、常連の客とひと言ふた言会話を交わす程度。。
でも、そんな静かな時間が、妙に居心地の良い喫茶店でした。。。

ある日、隠者が仕事で『中華料理店』のオープンの仕事に携わっていた時には、この店に飾ってあった『中国雑技団』の『京劇の仮面』を借りた事もあります。
その時は『仮面』のデザインを器に出来ないか考えていた時で、そういった理由も、何も聞かずに貸してくれました。。

この喫茶との出会いで、『エゴン・シーレ』という画家を知り、興味が沸き、作品を知り、『エゴン・シーレ』の生涯を綴ったDVDも借りて見ました。。

なぜ今頃になって『エゴンシーレ』という喫茶店のことを記事にしているのか。。。

それは今回、6月以来改めて、お店を訪ねてみて。。。
今回は残念なことに、お店はキレイに片付けられ・・
『テナント募集』の立て札が出されていました。。。

この看板を見た時には、本当にショックでした。。。
マスターは無事退院したのだろうか・・
もちろん、無事に退院して奥様と元気に暮らしていると信じていますが。。
もう『エゴンシーレ』のお店はやらないのだろうか。。。

切ない気持ちが溢れて来てしまいました。。。
自営業でやっているいじょう、跡継ぎがいなければいつかはやってくる、避けては通れない切ない現実。。 でも、大手チェーン店やフランチャイズ店には決して出せない、その店独特の色や雰囲気があって。。 こういった個性的なお店はずっと残っていて欲しいものですが、でも個性的ゆえに跡を引き継ぐのも難しい部分も沢山あって。。
今でも、こういった個性的で素敵なお店が、このようにしてたくさん消えていっては、また、新しいお店も生まれているのだろうと思うと、世の中の無情を感じてしまいます。。

『エゴンシーレ』マスターが、元気になってこの記事のことを見つけてくれたら嬉しいな。。『エゴンシーレ』本当に良いお店でしたよ。。

ハナレグミ - きのみ



画家 エゴン・シーレ に興味が湧いた方は↓こちらを参照下さい。
エゴン・シーレ - Egon Schiele(Wikipedia)
エゴン・シーレ 作品集 & シューベルト「死と乙女」YouTube動画


マスターの『姪』にあたる方からのコメントを頂き、その後、こちらの記事の続きを記事にしましたので、良かったらそちらも覗いて下さい。

posted by いんじゃ at 23:38| Comment(8) | TrackBack(0) | さすらいの出張旅日記 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする
この記事へのコメント
ちょっと検索しててたどり着きました。
シーレのオーナは亡くなりました。あのカレーが
食べられないのは残念ですよね。
奥さんにレシピ聞いとけば良かったです。

Posted by arochang at 2010年06月05日 21:03
コメントありがとうございます。
大変残念なご報告で、ショックです。。
以前、この記事をご覧になられた他の方からもメールで心配されている旨のコメントを頂いた事もあり、エゴンシーレには私と同じようにファンの方がたくさん居られたのだなと感じました。
本当に残念でなりませんが、せめてこういうブログという形でも『エゴンシーレ』という素敵なお店があったのだという記憶を残しておければと思います。。
マスターのご冥福をお祈りします。
Posted by いんじゃ at 2010年06月05日 23:49
私は富山在住でエゴンシーレにはランチなどに週に3回は通っていました。
もう10年以上よらせていただきましたが、マスターの名前すら知りませんでした。
マスターはお亡くなりになったそうです。
奥さんのことも気になりますが、全く知るすべがありません。
名前ぐらい聞いておくべきでした。私の知っているのはこれだけです。
よけいなお世話でしたら、大変申し訳ありません。
Posted by ひろし at 2011年02月01日 21:11
ひろしさん コメントありがとう御座います

エゴンシーレ、別に特別オシャレでも雰囲気があるわけでもなんでもない喫茶でしたが、何故だか不思議な居心地の良さを感じる喫茶でした。
それはきっとこの店に通われていた方なら、皆さん共通で感じられていた事ではないかと思います。
もしかしたら、いつも寡黙だったご夫妻だったからこそ、感じた居心地の良さだったかも知れませんし、だからこそ皆さんご夫妻の素性について詳しくを知らなかったのかも知れませんね。
でもこうやってコメントやメールを頂く度に感じる事は、この店は本当に皆さんから愛されていたのだなと嬉しくまた懐かしく思い出されます。
今はただ奥様がご健在でいらっしゃる事を願うばかりです。
また新たな情報が入りました時には是非お知らせ頂けたら幸いです。
Posted by いんじゃ at 2011年02月01日 21:16
こんにちは、はじめまして。

エゴンシーレのマスターは私の伯父です。(突然すみません。)
他の方が書いてくださってますが'09年7月に他界しました。
病気がわかってから、私たちもまさか…と思っているうちに
あっという間に逝ってしまいました。

伯父は絵画を描くこととあのお店をこよなく愛し、
亡くなる直前まで病床で「お客さんが来てくれるからお店を開けないと…」
と言っては私の父(弟)にとめられていました。

私は時々その言葉を思い出して、
Web上でかつてのお客様方がお店について書いてくださっている記事を見つけ、
伯母に見せ伯父の仏前で報告しています。

いんじゃさんのこの記事は伯父や伯母、そしてお店のことを
本当に忠実かつ鮮明にそれに親しみを持って書いてくださっていて、
伯父が生き生きと働いていた様子を思い出させてくださいました。
とても嬉しいです、ありがとうございます。

arochangさん、ひろしさんもどうもありがとうございます。

こんなに皆さんに愛され慕っていただいてたのですね。
伯父もとても喜んでくれると思います。
早速記事を持っていって、報告させていただきますね。

長々とおじゃましましたm(__)m




Posted by yuki at 2011年04月13日 10:05
yuki さん コメントありがとう御座います。

マスターの身内の方にまで辿り着く事が出来て、これほど嬉しい事はありません。
やっと思いが通じた気持ちです。本当に記事にして良かったなと思います。

同じ零細企業の自営業を営むものとして、店を作り育てていく喜びもあれば、それを続け次に繋げる難しさも感じています。
珈琲舎『エゴンシーレ』は、まさにマスターの人生そのもので、その魅力に惹かれ客は足を運んだのだと思います。
こうして店が無くなってしまったのは残念でなりませんが、多くの客に愛されていた、そんなお店を作る事が出来たマスターを、同じ自営業を営むものとして私は羨ましくも思います。

マスターの思いが詰まった 珈琲舎『エゴンシーレ』が、このブログを通じて少しでもその軌跡を残せたら嬉しく思います。

奥様にもくれぐれも宜しくとお伝え下さい。(『京劇の仮面』を借りた『器や』と言えば、もしかしたら覚えていて下さっているかも知れません)

そして、マスターにも『エゴンシーレ』素敵な店でしたよとお伝え下さい。
Posted by いんじゃ at 2011年04月13日 12:08
そのように思ってくださるいんじゃさんのお気持ち、本当に嬉しいです。
私の父もありがたいと言っていました。

ご存知のように伯父は無口なひとでしたから、珈琲舎『エゴンシーレ』をどんな風に思っていたか、私自身聞いたことはありません。いつ行っても何を聞いても、ただ微笑んでいるだけで…。

伯父たちは私の祖父から「お金に頭を下げるな。その向こうにいる『人』に頭を下げろ」と言われていたと父から聞きました。
簡単なようで、私には難しい行いです。

でも、伯父はそれを地で行くような人だったような気がします。来てくれたお客さんには、とにかくお腹いっぱいになって喜んで帰ってもらいたいと、ただそれだけを思っていたように見えました。

いんじゃさんをはじめたくさんのお客様が、閉店を惜しんで「素敵なお店だった」と言ってくださって、伯父は本望を遂げたのではないかと思います。

伯父の遺品と絵画はすべて私の父が預かっているのですが、いんじゃさんが借りられた京劇の仮面もあるのかもしれませんね。
絵もたくさん描き残していて、家はいま伯父の個展を無期限でやっているような状態です。

これも何かのご縁かもしれないし、お仕事などで富山に来られた時は、いんじゃさんさえよろしければ是非、実家にもお立ち寄りくださいと父が申しておりました。
場所はお店からはちょっと遠いのですが、入善町の黒部川沿いの港町にある小さなお寺なので、すぐわかると思います。
あ、でももちろん無理にとは言いません^^
お仕事お忙しいでしょうから…。

伯母も元気にしています。また会ったときに伝えておきますね。






Posted by yuki at 2011年04月14日 21:47
yuki さん、ご丁寧なお返事ありがとう御座います。

マスターが絵を描かれていた事・・
いんじゃの妄想もあながち間違っていなかったようですね(笑)

でも、お寺さんのご子息だったとまでは想像がつきませんでした。

出張の際に入善の近くへ行く機会がありました時には、是非立ち寄らせて頂こうと思います。
これからもどうぞ宜しくお願い申し上げます。
Posted by いんじゃ at 2011年04月17日 13:48
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